2025年12月13日土曜日

日本科学者会議入会申込書等

日本科学者会議の入会呼びかけと申込書です。
こちらにアクセスしてダウンロードしてください。





2025年10月8日水曜日

日本科学者会議群馬支部( JSAG ) 秋季セミナーのご案

日本科学者会議群馬支部秋季セミナー
アメリカの極右運動についての概観― トランプ大統領を支えるのは誰か ―
講 師:小谷 英生 氏(群馬大学教育学部 准教授・倫理学)
日 時:11月26日(水) 18:00~19:30  参加無料
講 師:小谷 英生 氏(群馬大学教育学部 准教授・倫理学)

場 所:Zoomミーティング ID: 935 9513 9722 パスコード: 52689425
  https://zoom.us/j/93595139722?pwd=PX1YboYHhKnmqE6RR39t536IwMM8wq.1

要旨 トランプ政権の支持層には大きく分けて共和党員、ラストベルトを中心としたブルーワーカー、隠れトランプ支持者(ソフトな差別主義者)、テクノ・リバタリアン、極右過激派の5つの集団がある。これらの集団の利益や主張は一部重なり合い、一部反発し合うものである。本セミナーでは極右過激派に着目し、〈人種差別を撤廃し、リベラル化したアメリカ〉という表の歴史の背後で蠢くアメリカの裏面史を紹介する。


2025年8月23日土曜日

日本科学者会議群馬支部(JSAG) 夏季セミナーのご案内

日本科学者会議群馬支部(JSAG)夏季セミナーを次のように行います。
奮ってご参加ください。
テーマ:すべての人のいのちをまもる(道端の異邦人)
日 時:2025年9月11日(木)18時00分〜19時30分 参加無料
講 師:長澤正隆氏(NPO法人北関東医療相談会・事務局長)
場 所:ZOOM

https://zoom.us/j/93738544773?pwd=1L5D6Ia5hidwtF1XginK0LVc5xpWAU.1
ミーティング ID: 937 3854 4773パスコード: 52689425

概要:私たちは、すべての人が健康と平和な生活ができる共生社会の実現をめざし、特に外国籍・生活困窮者の為の保健、医療又は福祉の増進を図る活動、社会教育の増進、災害救護、人権の擁護、国際協力などを目的として、AMIGOS(NPO法人・北関東医療相談会)として活動をおこなっています。 

活動内容:無料健康診断(X線、血液検査、尿検査、血圧測定、身体測定、問診、子宮頸がん、乳がん検診)各国語によるお知らせと医師の報告会、病院の紹介と伴走支援、生活相談(食料品の配布他)、学習会(講師を招聘し講演会を企画実費請求)等。

2025年6月15日日曜日

日本科学者会議群馬支部(JSAG)総会記念セミナー要旨

日本科学者会議群馬支部( JSAG ) 総会記念セミナーについて
テーマ:桐生市の生活保護問題について
日時:2025年5月28日(水)18時00分〜19時30分 参加無料
講師:斎藤 匠氏(斎藤法律事務所・弁護士)
場所:高崎経済大学212教室(2号館1階)
参加者はZOOM参加者を含め23⼈。司会は藤井正希先生(群馬大学社会情報学部)が行った。

斎藤 匠氏講演内容
事件の発端
 2023年7月26日に桐生市在住の50代のA氏は生活保護の申請を行った。その時、支援者が同行したが、当初同席や発言を否定された。8月9日に、月額7万1500円程の生活扶助費と家賃支給が決定された。桐生市は、一括ではなく1日1000円の分割支給し(光熱費や電話代請求書を示せば別途支給された)、総額でも半額程度しか渡していない。月曜日から金曜日まで、自分の足で市の保護係窓口に来る前に、ハローワークに行かせ、そこで受付の判子をもらわなければ支給しない、という扱いだった。A氏は、これはおかしいと思い、支援団体の司法書士に相談した。全国的にも前例のない事件だったので、大きく報道された。
 A氏の事案の報道により明らかになる多く問題行為 
・報道を見た他の生活保護利用者から支援団体に対し、分割支給・一部不支給というA氏の事例と類似した相談が多数寄せられた。
・市による扶養届の偽造が疑われる事案や、扶養届に基づく収入認定が違法な事案もあった。
・窓口での申請拒否(いわゆる水際作戦)相談も多かった。
・桐生市が、利用者と同じ姓の認め印を多数保有して、利用者名の文書を承諾なく作成していたと思われる事案があった。
・桐生市管理の認め印は1948本あった。勝手に受領証に押印していた事例もあったことも確認されている
・民間の金銭管理団体による金銭管理の事実上の強制があった。
・これらの対応を管理していた助川直樹保健福祉部長(当時)は、事件発覚前に退職している。
・金銭管理を行っていた外部の民間団体、「社会福祉協議会」、「日本福祉サポート」、「ほほえみの会」

第三者委員会へ寄せられた情報提供の内容 (2025年1月6日から23日までの情報。)
・生活保護利用者につい て、「ろくでもねぇ」「あいつらはくず」と言ってはばからない職員がいた。(通し番号75)
・保護係の職員による恫喝(どうかつ)、罵声は日常茶飯事で、他課さえ聞く堪えない内容だった。 しかも誰も注意せず、制止しなかった。自浄作用がない(同49)
・特定の職員がよく怒鳴っているのが、近くで仕事をしているときに聞こえた。 これは周知の事実だと思う(同91)以上いずも桐生市役所職員から情報。
・家計簿が1円でもあわないと怒鳴られた。眼鏡を購入した際に「こは税金ですよ」と怒鳴られた。(同15・利用者)
・担当職員が窓口の男女に「てめえら」 「ふざけんじゃーぞ」「さっさと仕事しろや」などと大声で怒鳴りつけている場面をみた(同97・市民 )
・何故、このような対応がなされていたのか? 

国家賠償請求事件の提訴
・2024年4月3日に提訴
・原告は、A氏、B氏の2名  被告は桐生市
・B氏も、桐生市から生活扶助費として7日毎に7000円(1日あたり1000円)と光熱費等が渡されていた。
・請求額は1人あたり25万円の慰謝料と10%弁護士費用、の一部請求とした。
・違法行為は、①A氏、B氏ともに生活扶助費の一部不支給(生活保護法31条2項違反。)
・②A氏について、ハローワークに赴いて、求職活動をすること支給条件として、平日毎に来所させて手渡する(即ち過度な分割支給の)違法。
・2024年9月17日に、3人目の原告としてC氏が提訴。
・C氏は、上記①の一部不支給の違法性他に、③扶養届に基づく収入認定の違法性を主張。
・C氏には母から月額6000円相当の食品による現物援助があるとして、生活保護利用当初から同額が減されていたが、実際には援助はなく、桐生市は確認を怠った点で法3条、8条及び31条2項違反

裁判での桐生市の主張
・一部不支給については法31条2項違反であること認めた。
・組織的な行為であることも認めた。
・未支給の現金については、利用者毎に封筒で管理し、封筒の表裏に手書きのペンで収支を記載していた。
・一方で、分割支給について桐生市は、男性の同意を得たと主張した。但し、同意を得たから違法では無いとは言ってない
・ハローワークで判子をもらうことを扶助費の支給条件はしていない、と主張
・扶養届による現物送付を確認していない点については、法61条(届け出の義務)を根拠に、桐生市行為は違法で無いと主張してる。

裁判の目的
・出来る限り詳細に求釈明を繰り返し、本件の違法行為が組織的なものであることを認めさせる。
・本件違法行為については、福祉事務所長以下職員全が了解して実行していたこと、末端の職員の行き過ぎた行為ではないことを明らかにする。
・その上で、何故このような行為が実行されたのかその理由を明らかにし、再発防止に何が必要なのかが明らかになればよい。

群馬県の特別監査の要点
・2024年6月19日通知によれば、 不適切な対応の主なものとして、 
・①当月内に保護費を全額支給していな事案(法第31条第2項違反)
市の主張:一度支給した保護費を市が預かる・・・地方自治法235条の4、第2項に違反)
・②過度な分割支給
・③市が保管している認印の使用(件数の特定困難)
・④窓口支給日と異なる日付を受領簿に記載 
・⑤行方不明の親族名で提出された「扶養届」で収入認定、を挙げている。 
・被保護者数の減少については、申請権の侵害が疑われる事案が多数あること、境界層該当措置に係わる却下については、仕送りの強要が疑われるものや、実態が把握できない事案が多数あるとの指摘があった。

桐生市長コメント(令和7年3月28日) 
・本市生活保護の利用者数がおよそ10年で半減したことについて、その時期の桐生市福祉事務所の組織として認識に重大な問題があり、そこから生じた執行により、申請権の侵害が生じていたことが大きな要因であったと厳粛に受け止め、深く反省しております。
・3つの不適切事案にきましては、「最低生活保障」及び「自立助長」という制度の目的に適合しない指導や、様々な不適切な対応があり、ご指摘の通り極めて不正常な組織体制に陥っていたものと改めて認識いたしました。
・生活保護制度の崇高な理念を身勝手な解釈で捻じ曲げ、組織風土の中に形成された、悪しき慣行や極めてずさんな事務処理の数々について、福祉事務所という、他部局にはない組織構造とはいえ、問題発覚まで一切気づけなかった私どもの責任は重く、心から恥じております。
・制度利用者並びに相談者の皆様に対して、 耐え難い苦痛や不利益を与えてしまったこと、また、桐生市民の誇りを著しく傷付けてしまったことに対しまして、心よりお詫び申し上げます。
・被保護者・受給の呼び方について、この報告書が使っっている、「利用者」に統一し、徹底する
・適正な事務の執行を今後維持していくために、来年度は、群馬県へ職員派遣研修実施する方向で調整している
・生活保護行政の運営において模範的な先進自治体への視察研修つきましも早期実施向け調整している
・職員体制につきましては、ケースワーカーを1名増員し、 8名体制とし法定人数を満たす
・査察指導員も1名増員し、 2名体制とすることでケースワークの実施体制を強化する
・ケースワーカー8名のうち、社会福祉士資格を有するケースワーカーを2名増員し 3名体制とし、女性ケースワーカーを1名増員し 3名体制とする
・医療や健康面からの生活支援充実を図るため、保護係に保健師2名を配置すること決めた
・また、専門性を踏えた対応を強化するため、キャリアコンサルタント資格を有する就労支援相談員および、ケースワーカー経験のある面接相談員を各1名ずつ配置することし、保護係への警察OBの配置はいたしません。
・認識ちがいを防ぐことを目的した窓口相談の録音実施
・総務部に生活保護対応相談窓口を設置し、利用者がケースワーカーの話しにくい相談や苦情について、過去の問題も含め受け付ける体制を構築する。
・生活保護業務運営の健全化計画を策定し、法令順守徹底を図る中で、組織として改善状況を随時、確認するとともに、利用者への適正な対応を維持していくためのチャック機能を有するコンプライアンス体制を構築したいと考えている。
・こうした一連の再発防止策を速やかに実現するよう、総務部長、保健福祉部長に指示した。
・桐生市を被告とする国家賠償請求訴訟につきましても、 本報告の内容を踏まえまして、訴訟委任している代理人弁護士とも協議のうえ、適切に対応していく。
・本市の不適切な生活保護業務につきましては、利用者の方、市民の方のみならず厚生労働省、群馬県を始め、多くの関係機関の皆様に、多大なるご迷惑おかけし、大変申し訳なく思っている。
・今後、二度とこのような事態を起さないよう、市長である私が先頭に立ち、福祉事務所職員一丸となって生活保護行政の一層の改善を進めることで、信頼回復に努めてまいります。
・最後に、責任者である私につきましては、給料月額の100 分の30 、6か月、副市長は給料額の100 分の20 、6か月、減額する議案を次期議会に提出したいと考えております。
・関係職員につきましても、管理等の処分が必要と考えおり、「桐生市行政審査委員会」に諮った上で、後日、公表させていだきと考えております。
・桐生市福祉事務所が、真に生まれ変わったと市民の皆様から認めていだけるよう、生活保護制度を必要とする方々、制度利用する方々に寄り添った適正な運用に全身全霊を傾注してまいります。

群馬・桐生市の生活保護問題 幹部職員など7人を懲戒処分
2025年5月12日 20時0分群馬テレビニュースを改変
生活保護費の不適切な支給を巡る問題で、桐生市は、管理監督者という立場にあった幹部職員など7人を懲戒処分にしたと発表しました。懲戒処分となったのは、生活保護業務を管理監督する立場にあった 50代の部長級から課長補佐級までの5人と生活保護費の支給業務に携わっていた40代の主査と30代の主任のあわせて7人です。50代の職員5人は、管理監督する立場にありながら、長年にわたり行われてきた生活保護業務における不適切な事務処理を改善することができず市の信頼を著しく失墜させたとしています。また、30代の主任については、生活保護費の支給決定を怠り、福祉課に保管してあった印鑑を本人の同意なく生活保護費の受領簿に押印していました。市は、50代の職員5人と30代の主任の6人を減給10分の1、1カ月の処分にし、40代の主査を戒告処分にしました。桐生市の荒木市長は、「生活保護制度利用者並びに相談者の皆様に対して、耐え難い苦痛や不利益を与えてしまったことに心よりお詫び申し上げます。生活保護制度を必要とする方々や利用する方々に寄り添った適正な運用に全身全霊を傾注してまいります」とコメントしています。

荒木恵司市長は「生活保護の利用者や相談者に耐えがたい苦痛や不利益を与えてしまい心よりお詫び申し上げます。制度を必要とする方、利用する方々に寄り添った適正な運用に全身全霊を傾注してまいります」とコメントしている。この問題を巡っては、荒木市長の給与を30パーセント、森山享大副市長の給与を20パーセント、それぞれ6か月減額する条例案も議会で可決されている。

 文責 青木武生 

2025年5月6日火曜日

日本学術会議法案に反対する会長声明 群馬弁護士会

 日本学術会議法案に反対する会長声明
1 .2025年3月7日、 政府は、日本学術会議法案(以下「法案」という)を国会に提出した。法案は、日本学術会議法(以下「現行法」という)を廃止し、現行の日本学術会議とは全く異なる組織としての法人「日本学術会議」(以下「法人」という)を新設するものである。しかし、その内容は、日本学術会議がナショナルアカデミーとして有すべき政治権力からの独立性・自律性を失わせ、憲法23条が保障する学問の自由を侵害するものであって、到底容認できない。
2.そもそも、この問題は、2020年10月1日、当時の管内閣総理大臣が日本学術会議の会員6名の任命を拒否したことに端を発している。この任命拒否について同内閣総理大臣は、その具体的理由を明らかにしないまま「組織全体の見直し」にまで言及していた。
 これに対して当会は、同年11月11日付「日本学術会議の会員任命拒否を撤回し、同会議の推薦どおりに任命するよう求める会長声明」において、①明治憲法下で政府が
学問を弾圧してきたことへの反省に基づいて現行法が制定されたこと、②学問の自由の保障のために日本学術会議の独立性と自律性が確保されていること、③任命拒否は
現行法7条2項に違反し、憲法23条の学問の自由を侵害するものであることを指摘し、速やかな任命を求めた。
 法案は、こうした違憲性・違法性が何ら払拭されないまま、むしろこれを糊塗するかのように提出されたものである。
3.現行法では「日本学術会議は、独立して……職務を行う」(3条柱書)とあり、職務の独立性が確保されているのに対して、法案に職務の独立性を定める文言はない。むし
ろ、法人に複数の機関を設けることにより、政府をはじめ外部からの介入を許容する体制が幾重にも作られている。
 すなわち、会員以外の者から選任される選定助言委員会が会員の選定方針に関して
意見を述べ(法案26条1項1号・31条4項)、会員以外の者から任命される運営助言委員会が法人の活動、運営等に関して意見を述べ(法案27条1項・36条3項)、内閣府に設置され、内閣総理大臣が委員を任命する日本学術会議評価委員会が法人の中期的な活動計画や業務の点検評価について意見を述べ(法案42条3項・51条)、内閣総理大臣が会員以外の者から委員を任命する監事が業務を監査し、調査を行うとされている(法案19条・23条)。
4.さらに、法案では、会員候補者の選定に当たっては、会員で構成される会員候補者選定委員会(法案25条3項)が「会員、大学、研究機関、学会、経済団体その他の民間の団体等の多様な関係者から推薦を求める」といった「必要な措置を講じなければなら」ず(法案30条2項)、「行政、産業界等との連携による活動」等の実績のある科学者が含まれるよう「配慮しなければならない」(法案30条4項3号)とされている。現行法が「優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し」(17条)としていることと比較すると、法案は、現行法にはない多くの制約を課すものといえる。
 これら各機関の設置・運用は、活動面における政府からの独立性、会員選考における独立性・自律性といったナショナルアカデミーの根幹を損なうものであり、学問の自由に対する重大な脅威となりかねない。
5.また、財源は、政府が「必要と認める金額を補助することができる」とするにとどまり(法案48条1項)、「国庫の負担」を明記する現行法1条3項からは大きく後退している。
6 .日本学術会議は、2021年4月22日、「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」と題する声明を発表し、その中で、各国のナショナルアカデミーが共通して備えている要件として、①学術的に国を代表する機関としての地位、②そのための公的資格の付与、③国家財政支出による安定した財政基盤、④活動面での政府からの独立、⑤会員選考における自主性・独立性があることを挙げ、日本学術会議がその役割を発揮するためにはこれらの5要件の制度的保障が不可欠であることを強調した。
 しかるに、法案は、これらの5要件を大きく逸脱しており、日本学術会議を国際水準に遠く及ばない存在へと変質させている。
7.よって、当会は、政府に対し、法案の撤回を要求するとともに、内閣総理大臣に対し、改めて2020年10月の学術会議会員候補者6名の任命拒否を是正してその正常化を図るよう求めるものである。

以 上
2025年4月21日
群馬弁護士会 会長 横地宏紀

2025年5月4日日曜日

日本科学者会議群馬支部幹事会 声明

 学問の自由を保障し、軍拡でなく文教予算の倍増を
2025年2月20日
日本科学者会議群馬支部幹事会


 本年の第217回国会(25年1月24日~)では、日本の学問研究の自由や文教体制をめぐって、将来に禍根を残すような議案が提出・可決されようとしている。
日本科学者会議群馬支部幹事会は、学問研究と表現の自由を尊重する立場から、日本学術会議の法人化に反対し、教育研究の充実を希求する立場から、「戦争に巻き込まれる防衛予算でなく文教予算の倍増」を表明する。
 今国会で政府が提出する日本学術会議法改正案には、「選考助言委員会」・「運営助言委員会」・「レビュー委員会」・「監事」などを新設し、政府や産業界による学術会議への監視・介入に道を開いている。これは、時の政府と産業界の目先の利害を優先し、人類の科学の発展・平和・民主主義を阻害し、学問研究の自由を侵害する法案なので、認めることはできない。
 戦後最大の115兆円の本年の一般会計予算では、社会保障・生活関連予算が抑え込まれる一方、最大の伸びを示したのは8.7兆円に達した「防衛関係予算」であり、5.5兆円に留まった「文教および科学振興予算」を大幅に上回った。現代日本の教育研究の現場は、初等・中等・高等教育機関において、それぞれ人不足・物不足・資金不足に直面している。初等・中等教育機関では、職場としては過酷な労働現場であり、高等教育機関では、研究設備や自由に使える研究費が貧弱で、自主的・創造的な研究テーマが追求しにくい環境にある。小規模の私立大学は経営すら立ち行かない事態に陥っている。
 このような劣悪な教育研究環境では、日本の未来展望は描けないので、文教予算を倍増し、教育研究スタッフの倍増、設備の更新・充実、研究費の充実を実現することが喫緊の課題である。
 以上の理由から、日本科学者会議群馬支部幹事会は、ここに「学問の自由を保障し、軍拡でなく文教予算の倍増を」の声明を公表する。

2025年4月25日金曜日

JSAG規約

日本科学者会議群馬支部規約(2015年4月24日改正)です。→JSAG規約


※最上部に表示するために、日付を2025年4月25日としています。

2025年4月10日木曜日

日本科学者会議群馬支部( JSAG ) 総会記念セミナーのご案内

 日本科学者会議群馬支部( JSAG ) 総会記念セミナーのご案内

 
テーマ:桐生市の生活保護問題について(仮)
日 時:2025年5月28日(水)18時00分〜19時30分 参加無料
講 師:斎藤 匠氏(斎藤法律事務所・弁護士)
場 所:高崎経済大学212教室(2号館1階)
※学内駐車場は教職員優先です。お越しの際は、公共交通機関をご利用ください。
※企画問い合わせは日本科学者会議群馬支部までお願いします。

(大学事務局では対応できません)。

概 要:2023年10月、生活保護利用者からの相談により、桐生市の生活保護行政に多くの問題があることが明らかとなりました。決定された生活扶助額全額を支給せず、1日あたり1000円を、毎日ハローワークに通って判子をもらってくることを条件に支給していました。憲法25条に定められた生存権(健康で文化的な最低限度の生活を営む権利)を保障するのが生活保護です。桐生市で何が行われていたのか、何故行われていたのか、防止するにはどうしたら良いか、説明します。

学内のお越しの場合には、できるだけ、公共交通機関をご利用くださるようお願いします。 

高崎駅西口バス乗り場 2番
箕郷営業所高崎駅西口発着「高崎駅-経大前-沖白川橋-箕郷」区間
榛名営業所高崎駅西口発着「高崎駅-経大前-本郷-室田-榛名湖」区間

市内循環バスぐるりん
高崎駅西口バス乗り場 4番
系統番号3 経大・金井淵コース(下り)・六郷・真木病院コース(上り)
系統番号4 六郷・真木病院コース(下り)・経大・金井淵コース(上り)



 


2024年12月20日金曜日

JSAG秋季セミナー 丹治杉江氏 講演要旨

 JSAG秋季セミナー 今回は対面講演でした。 参加者13名 
場所 群馬県前橋市総合福祉会館第3会議室
2024年11月12日(火)17時30分~19時30分 講師 丹治杉江氏
(ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・ふくしま伝言館事務局長 ALPS処理汚染水放出差止訴訟事務局長)
演題:終わらない原発事故~福島被災地レポート                
何の落ち度もないのに原発事故被災・司法不当判決・汚染水放出による環境再汚染…三重被害者となった

はじめに
 東日本大震災とそれに続く東京電力福島第一原発事故から13年7か月。放射能事故は収束どころか、ますます深刻で複雑な事態となっています。被災地の「原発事故緊急事態宣言」は発せられたまま、福島県は公衆の被ばく限度として国際的に勧告されている年1ミリシーベルトの20倍、20m㏜を容認強要。法治国家で許されるのでしょうか。
 政府・マスメディアは「復興」を強調しますが「復旧」さえも儘ならない、学校も、医療機関もスーパーもガソリンスタンドも介護施設もまともにない地域に被災者が戻れる筈はなく、避難指示地域の帰還率は10%程度。将来の町の未来像は描けないのが実態です。
 福島第一原発では、「廃炉」の最終形が見通せず、作業員の被ばく事故が相次いでいます。デブリ0.7g取り出しに2兆円!事故後13年でこの事態。できもしない廃炉をできるかのように装う「やるやる詐欺」に騙される一方で、福島事故原発の二次災害リスクは高まるばかりです。汚染水海洋投棄に伴う作業員の深刻な被ばく事故も続いています。
 一方で、元日に発生した能登半島地震では、震源近くに立地する志賀原発(停止中)も強い揺れと3メートルの津波に襲われ、変圧器から約2万リットルの油が漏れ、外部電源の一部から受電ができなくなるなどのトラブルが生じました。道路の寸断、海岸線の隆起、放射線モニタリングポストの故障等、改めて原発施設の脆弱性と放射能から「逃げる・遮断する・洗う」という「避難」「防御」計画の非現実性を浮き彫りにしました。
 にもかかわらず、石破首相は岸田政権のGX政策を強力に推し進めようとしています。どんな革新炉でも「使用済み核燃料」の安全な処理、放射能をなくすことは原理的に不可能なのです。「安全が確認された原発再稼働」という「安全の基準」とは何でしょうか?
 福島事故被害は続いています。放射性物質の拡散と、被害の実相を伝える人々に「風評加害者」レッテルを張り、事故の終息/被災者切り捨てを進める原子力複合体を告発します。

1)福島被災地の状況
①ふるさとに戻れない住民は8万人余、今後100年は人が住めなくなってしまった地域は7町村にわたり309㌔㎡、東京23区の半分の広さに及びます。震災前には病院は8つありましたが、 再開したのは2つ。診療所は61から32に減りました。学校については、小学校・中学校は震災前にあわせて41校ありましたが、現在は23校です。県立高校も8校から2校(6校は休校)。これらの数字には原発事故の過酷さ、異常さ、事故が終わってない事が示されてます。
②帰還困難区域に「特定再生復興拠点」?!帰還か避難継続か。分断と矛盾を拡大。
③原発事故避難者などの関連死は2,335人。(直接死1600人)関連自殺者はわかっているだけで119人。孤独死激増。子ども甲状腺がん問題は第2次検査では高線量地域での発生が顕著。事故10年後から始まるとされた原発事故由来の「心筋梗塞、多臓器ガン」の発症など、静かにしかし確実に健康被害が始まっています。
④福島県の産業もまだら状に「特需景気」もあるものの事故前には戻っていない。農業産出額は国の支援もあり3.11前の90%まで回復している物もあるが、林業産出額は80%(山菜・キノコの出荷制限16県に及んでいる)。漁業では沿岸魚業の水揚げ高は20%台で厳しいまま。今後、長期間の「汚染水放出」の影響が懸念される。
⑤コンビニ・スーパー・ガソリンスタンド(日曜休業多し)はわずかながら開店。床屋はあっても、病院も美容院も介護施設も保育園も1~2か所。若者がいない。子育て世代がいない。地域社会はまともに機能していない。

2)「廃炉中長期ロードマップ」第5回改訂、40年で終わらない
◎不都合な真実・・・「廃炉」「避難」「ボランティアの放射能被爆」に関する法律が無い
■「廃炉・廃棄物」30年後の責任者は?、 70年80兆円越え?、税金と電気代!

終らない廃炉・危険なフクイチ
廃炉作業労働者は1日約4,000人が年間被ばく量50m㏜、5年で100m㏜上限まで働かされるのです。「基準」は非人道的。しかし、作業員が居なければ廃炉はできない。
①デブリ問題・・・メルトダウンを起こした1~3号機の全量推定880t取り出せても最終処分の見通しはない。今後の28年で取り出すとしたら、毎日休みなく80㌔ずつ取り出さなくてはならない計画。13年間で、デブリ0.7gつまみだしで大喜び?
➁原子炉格納容器蓋・・・・桁違いのセシウム付着が判明
1~3号機の格納容器上蓋(シールドプラグ)に途方もない高濃度の放射性物質が付着していることを発表。その量は3基合計で50.1PBq∼最大70P㏃。※ P=ペタ・・・1,000兆Bq(ベクレル) 「7京問題」と呼ばれる。3.11拡散量の23倍以上。
③廃炉に伴い発生する「原子炉建屋構造物や制御棒」など「低レベル」L1放射性廃棄物とはいえ、かなりの高線量廃棄物。総量28万㌧、規制委員会規制基準ではすべて地下70メートルより深く埋めて3~400年は電力会社、のち10万年は隔離保管。これは北海道寿都町で話題の高レベル廃棄物とは別の問題。参:1600年関ヶ原の闘い
④中間貯蔵施設(大熊町・双葉町16k㎡)(2,200万トン!)、30年後どうする?
⑤1号機の土台(ペデスタン)損傷!燃料プールに倒壊したら最悪事故に。鉄筋コンクリートの円筒形で、厚さ1.2メートル、内側の直径は5メートル。核燃料が入っていた重さ440トンの圧力容器を支えているが、壁面が床から高さ1メートルにわたって全周でコンクリートがなくなり、鉄筋が露出。事故時の溶融燃料の熱で崩壊した可能性がある。土台外周の床付近は堆積物が積もって確認できず、損傷の奥行きは不明。
⑥たまり続けるALPS処理後、こし取られた汚泥状の「スラリー」の処分方法がない。
ストロンチウムやセシウム、数千Bq(ベクレル)の高濃度汚染物。2013年からたまり続けて現在数百トン。容器の劣化も進む中、処分方法がない。
 
3)ALPS処理汚染水・海はゴミ捨て場ではない!プラスチックはダメで放射能はいいの?
 デブリある限り、地下水の流入を止めない限り、汚染水発生し、放出は続く。現在は90~100t/日発生。放出は3月までで3万1200tでタンク約30基分だが、増える量は約20基分。実質10基分しか減らない。海洋環境は汚染されつづける。
 タンク1000基にたまった130万㌧!汚染水を海洋投棄することが「福島の復興」に役立つのか!廃炉を進める為に必要なのか!IAEAは国際的中立の第三者機関か。

■9月8日、11月9日福島地裁に「海洋放出差止」訴訟提起
「ALPS処理汚染水」の海洋放出によって「二重の被害」を受けることになる。しかも今回の被害は国や東電の故意によるもので、新たな加害行為だ。
・海洋放出は非科学的!・・・・六ケ所村再処理工場の汚染水問題が見え隠れ。海産物の体内蓄積や環境への影響が専門家から懸念。海水で薄めても総量は同じ。
・2015年「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」という約束反故は民主主義の破壊行為であり、今後の福島廃炉に伴う放射性廃棄物の処理の合意形成の試金石。「放射性物質」を故意に、人類共有の資産であるに流すという行為は、法律以前の平穏的生活権侵害であり道徳性・倫理感の欠如、平穏生活圏の侵害です。賠償金を用意しなければ行えない「海洋投棄」は即刻中止すべき、と、怒りをもって福島地裁に提訴。

この海洋投棄案には対案がある
①10万トン級大型タンクの建設による長期保管や、モルタル固化処分案
➁地下水を遮断できる「広域遮水壁」案、流入を止める集水井戸。

◆現在のダダ漏れ凍土壁345億円、維持費10億円・・・広域遮水壁は半額で作れる。
・廃炉まで70年余。被害、81兆円という試算もある。たとえ汚染水海洋放出しても、長期の凍土壁の寿命も心配されている。まずは発生を止めることが重要。

4)真の復興を求めて・・・「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」
・新しい産業による新しいまちづくりで私たちが願う「ふるさと復興」は出来ない
・膨大な復興予算投入=惨事便乗型大型開発、ロボット開発に隠れた「軍事産業研究場」
・原発事故を利用して原子力ムラが「もうひと儲け」でしかありません。

5)減災・防災の立場から「原発稼働」ありえない!ゆるさない!!
・災害列島日本111の活火山 54基の原発は稼働しようがしまいが依然存在
・地震 異常気象 コロナ・・・「危険の予測と防御」「人道的避難」は国民的課題

6)原発事故被災者民事訴訟
・全国30余訴訟、被害者の権利回復、事故原因解明、救済を求めている。
・2022年6月17日最高裁は「想定外の津波」に逃げ込み「国の責任」を免罪。
・過去の責任の否定は、将来の義務の放棄。あの過酷事故の教訓や反省は?

《最後に》
・原発はそもそも憲法違反施設であり「核発電」。人口が少なく産業がない町なら迷惑・危険施設建設OKなのか。過疎村に金さえ投げ込めば、無理が通り道理が引っ込む?
・日本の原子力安全規制は、事故に責任は持たない、原子力推進側と一体の体制であり、「泥棒に十手を持たせる」のと同じとまで言われています。
・また、被災者を切り捨て、国の事故責任を否定し、再稼働に力を貸す司法の不正義は許せません。
・地震大国原発「耐震基準」600~1000ガル。三井ホーム5115ガル、住友林業3406ガル。今、新規原発の建設費用を含むもろもろのコストを事業者が発電前から徴収できるようにする「RABモデル」という制度が導入されようとしています。原発は国民にとってとんでもない負債なのです。SDGsや社会保障等を充実させても、一度原発事故が起きたらすべて終わりです。
・原発は核兵器製造の技術と表裏一体。プルトニウム製造工場です。私達は、次世代に、自らが解決できない重大な負債・課題を引き渡そうとしています。
・原発は嘘、隠蔽、札束、強権で動かし、「安全神話」は一貫した政・官・財・学・マスコミ、さらに司法の強力な布陣で作り上げられました。原発はクリーンでもグリーンでもありません。ウラン採掘から燃料加工、原発の運転廃棄物処理、廃炉に至る間まで、環境を汚染し労働者の被ばくを伴います。
・今原発は電力供給量5%程度。再生可能エネの4分の一です。節電と再生可能エネへの転換、蓄電池や電気の融通システムなど、原発なくても電気は足ります。
「無知は罪。無口はもっと罪。」  文責 丹治杉江



 

2024年10月11日金曜日

JSAG秋期セミナーのお知らせ 11月12日(火)

    今回は対面参加のみです。ふるってご参加ください


 

日本科学者会議群馬支部(JSAG)夏季セミナー 要旨

日本科学者会議群馬支部(JSAG)夏季セミナー
2024年8月8日(木)18時30分〜20時 ZOOMオンラインセミナーにて夏季セミナーをおこないました。講師は、群馬計理・税理士 清水耕児氏でした。
以下本人による要旨を掲載します。

消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)  

1、消費税の仕組みについて
 消費税は消費者(事業者も含む)が仕入れや経費などの購入の時に、本体価格と共に事業者に預けます。販売した事業者は売上の時に本体価格と共に消費税を預かります。預かった消費税から預けた消費税を差引きし(納税額計算)預かった消費税が多ければ消費税額を納税し、預けた消費税が多ければ消費税額が還付されます。

2、インボイス制度
 インボイス制度導入(令和5年10月1日)前では、預けた消費税(仕入税額)として、一定の書類の保存があれば納税額計算に含めることが出来ました。つまり、免税事業者からの仕入れでも買い手は納税額計算に含めることが可能でした。しかし、インボイス制度導入後はインボイスが無ければこの計算に含めることが出来なくなりました。
 インボイスとは「適格請求書」のことをいいます。通常の「請求書」との決定的な違いは「事業者登録番号」の有無です。インボイスを発行することが出来るのは税務署に「適格請求書等発行事業者の登録申請書」を提出した事業者だけです。免税事業者はインボイスを発行することはできませんが、この申請によりインボイス事業者になることが出来ます。インボイス事業者は納税義務の免除を受けることはできません。
 請求書にこの登録番号が無ければ納税額計算に含めることができないので、購入の時に消費税を預けている分、2重に消費税を負担していることになります。結果的に増税に繋がっていく制度です。 

3、インボイスの問題点
・免税事業者がインボイス登録して登録番号は貰えたが、消費税を納めるとは知らなかった。
・登録すれば納付書が税務署から届く、所得税申告の還付金と勝手に相殺されると勘違い。
・免税事業者がインボイス登録したが約17万人の無申告事業者が発生。
・事業者間の取引トラブル。どちらが消費税分を負担するのか。値決めの問題に関わること。 

まとめ 

 インボイス制度は実務には馴染まない。仕組みも複雑で問題の多い制度である。

2024年7月5日金曜日

JSAG夏季セミナーのお知らせ(確定版)


https://zoom.us/j/97092125141?pwd=gW4LxPS6Ov2sTJfarHq7w4dKIAJFl5.1
ミーティング ID: 970 9212 5141 パスコード: 52689425
 

2024年6月4日火曜日

日本科学者会議群馬支部( JSAG ) 総会記念セミナー要旨

「超国家的枠組みによるマイノリティの包摂と権利保護
  ―EU におけるロマ包摂政策を事例に―」

2024年5月30日(木)18時30分〜20時 
講師:土谷 岳史氏(高崎経済大学経済学部教授/専門 EU研究)

 本セミナーは、ヨーロッパにおける被差別集団であるロマを事例に、マイノリティ包摂という課題におけるEUの可能性を検討したものである。ロマはヨーロッパに1000万から1200万人程度存在するとされるマイノリティである。EU内にはおよそその半数が暮らしていると推定される。特に、ルーマニア、ブルガリア、ハンガリーなど中東欧諸国に多く存在し、人口に占める割合も10%弱と高い。スペインやフランスなど西欧諸国にもロマは存在するが、人口に占める割合は低いこともあり、ロマの包摂は中東欧の問題との認識がEUでは強い。ロマの人々は非定住生活を送るとされるが、多くのロマは定住生活者であり、主流社会のなかで暮らしている。しかし、主流社会に溶け込んで暮らしているロマは、ロマだとわかると差別される恐れがあるため、不可視化されている。
 そのうえでロマの人々の状況を確認しておくと、貧困のリスクは極めて高い状況にあり、安心して暮らせるような住環境がない人も50%程度となっている。教育からの排除も大きな問題であり、差別がライフサイクルの様々な時点での排除を生み出し、それがほかの面での排除へとつながるという悪循環が形成されている。コロナ禍でもロマの人々は深刻な影響を受け、社会からの排除を経験した。また、ウクライナから避難民でもロマということで排除を受けた人たちもいた。現在でも以上のような深刻な状況に置かれているロマの人々の包摂について、EUではどのような対応を取ってきたのか。
EUがロマの包摂を政策課題としたのは、中東欧諸国の拡大過程においてであった。EU加盟の条件にロマの包摂が含まれたため、中東欧諸国は「ロマ包摂の10年(2005-2015)」を開始したが、EU加盟が実現すると大きく進まなくなり、課題が残されたままとなった。一部の加盟国は、ロマはヨーロッパのマイノリティであるとして、自国の責任を否定し、EUに包摂の責任を負わせようとした。このようななかで策定されたのがEU初のロマ包摂政策である「2020年までのロマ統合国家戦略のためのEU枠組み」であった。
 本枠組みは、ロマ包摂は加盟国の責任であると明示し、EUで目標を定め、加盟国の自発的な創意工夫と相互学習を促しながら政策実施を目指す、「OMC」と呼ばれるソフトなガヴァナンスの方式に則ったものであった。EU立法を通じた政策執行という通常の方式と比べると、法的拘束力はないものの、合意形成が容易であり、柔軟性をもった方式である。加盟国間で意見が割れていたり、強い反対意見がある場合にはEU立法は困難なこともあり、ソフトなガヴァナンスの有用性は高い。しかしながら本報告の観点からは、被差別マイノリティの包摂という、政策実施主体である加盟国自体に政治的意思が欠けている場合に、このようなソフトなガヴァナンスは実効性があるか、というのが問われる。
 果たしてその結果は、大きな反省が迫られるものであった。教育や保健といった分野では改善が見られたものの、住宅といった基本的サービス、そして差別については逆に状況が悪化したという回答の方が多かったのである。
 EUは本枠組みを見直すなかで、ロマの参加が欠如したパターナリズムに陥っていた点と、差別対策の欠如を問題として認識し、2020年からの「EUロマ戦略枠組み:平等、包摂、参加」を策定した。欧州議会が求めた新たなEU立法ではなく、ソフトなガヴァナンス方式を踏襲し、EUが設定する目標の明確化、指標の策定など、拘束力を強化したものとなった。EU立法を避けた理由は可決の可能性が見えないというものであり、ロマへの差別対策について、加盟国のなかに政治的意思を欠いている国が少なくないことが推測される。新枠組みでも加盟国に義務付けられた加盟国戦略が、EUの指針などを適切に反映したものが少ないことなどからも、政治的意識の欠如という課題が続いていることが見える。
 改善の可能性を左右するのはロマへの差別(反ジプシー主義)認識の改善であり、新枠組みではロマのホロコーストの記憶がひとつの重要な戦略手段となっていることが伺える。しかし、ホロコーストの記憶の政治はEUの東西で大きく分かれており、中東欧諸国はEU主導の記憶の政治を、コスモポリタニズムの押し付けとして反発し、バックラッシュが起こる危険性が指摘される(詳細は、拙稿「EUにおける記憶の政治」『高崎経済大学論集』第66巻第4号、2024年を参照されたい)。上述のように、ロマは中東欧諸国に多く存在しており、ロマ・ホロコーストの記憶の政治は西欧主導の記憶枠組みに依拠するものである。バックラッシュを避けつつ政策の実効性が担保されるかどうかが注目される。新枠組みを運用するなかでインクリメンタリズムによる改善が見られるか、特に拘束力の強化が実効性を生み出すかが今後注視されよう。一方で、ロマの側も一枚岩ではなく、EU政治で活動するエリートと一般のロマの人々との乖離も指摘される。EUの枠組みのもとでの加盟国の政策の相互作用がロマの間の結束を強化するかどうかも注目に値する点であろう。
 最後に、多数の質問をいただき、十分に答えることのできなかったものも多かった。今後の課題としつつ、質疑のなかで報告者が示唆を受けた点について簡単に触れておきたい。複数の国家にわかれて生きるロマは一国単位の対応では不十分な、国際的な取り組みが必要な事例だと考えられる。それは問題の視角によって、ヨーロッパにとどまらず日本も含めた世界的な課題の一部、またはひとつの現れとしても捉えられるかもしれない。EUに欠けている帝国主義、植民地主義への反省とかかわる問題と理解するそのとき、帝国であった日本もまた普遍的な包摂を推し進めるために協力や相互学習のパートナーとして協力を進めるべきであろう。

                       文責 講師本人 土谷岳史

2024年5月22日水曜日

第21回JJS主催 オンライン読者会のお知らせ

第21回 JJS主催 オンライン読者会
主題︓群⾺県に居住する外国⼈が抱える諸問題
⽇時︓2024年6⽉1⽇(⼟)14時〜16時(開場時間:13時30分)
開催⽅法︓オンライン(Zoom Meetingによる)
ゲスト︓藤井正希さん・中村宗之さん・⻘⽊武⽣さん(群⾺⽀部)
関連論⽂︓『⽇本の科学者』2024年4⽉号
JSAの会員は、参加無料です。 ふるって、ご参加ください。

https://us02web.zoom.us/j/88101591271?pwd=NFQ3U24zbng3TFZ5eFZGSzdHZ0VVQT09

ミーティング ID: 881 0159 1271

パスコード: 060543

 

 

 

2024年4月14日日曜日

日本科学者会議群馬支部( JSAG ) 総会記念セミナーのご案内

 テーマ:超国家的枠組みによるマイノリティの包摂と権利保護
    ―EUにおけるロマ包摂政策を事例に―
日 時:2024年5月30日(木)18時30分〜20時  参加無料
講 師:土谷岳史氏(高崎経済大学経済学部教授/EU研究)
場 所:ZOOMミーティング

https://zoom.us/j/96939687587?pwd=MStVM1Eyc2pSdDdEZSs2dHF1WUt6UT09
ミーティング ID: 969 3968 7587 パスコード: 52689425

概要:マイノリティの包摂や権利保護は重要な課題であるが、当該マイノリティが差別されているとき、その重要性はさらに大きくなる。しかし、その差別ゆえに克服が困難でもある。本報告ではヨーロッパで最大の被差別マイノリティであるロマを事例に、超国家的政体であるEUがどのようにロマの包摂に取り組んでいるのかを検討したい。その際、ロマの文化的特性の政治的社会的構築のされ方やEUと加盟国の関係について着目することで、EUのロマ包摂政策の在り方の変容とその理由を明らかにしたい。

2024年2月22日木曜日

2024年2月14日(水)JSAG冬季セミナー要旨

 日本科学者会議群馬支部・冬季セミナーは、2024年2月14日(水)18時30分より、「検証・群馬の森朝鮮人追悼碑裁判 ― 歴史修正主義とは?」と題した公開講演会を、藤井正希氏(群馬大学情報学部准教授・憲法学)を講師に招き、ズーム開催いたしました。司会は、高崎経済大学教授の永田 舜教授が行いました。なお、参加者は会員、一般市民、学生を含め12人でした。

 以下は、講師自身にまとめていただいた要旨です。

 群馬県立の都市公園「群馬の森」にある朝鮮人追悼碑の存廃をめぐって、8年間も争われた“群馬の森朝鮮人追悼碑裁判”は社会的にも、歴史的にも、法的にもきわめて注目に値するものだが、いまだ広く人びとの関心を集めるものとはなっていない。 しかし、この裁判は、日本人の歴史観そのものを問うものであり、“歴史修正主義”の持つ危険性や恐ろしさに強く警鐘を鳴らすものである。本セミナーは、本裁判の事案と判旨を概観するとともに、問題点を明らかにし、徹底討論するべく開催されたものである。
 群馬の森朝鮮人追悼碑は県により既に撤去されてしまったが、この事件の最大の問題点が、追悼碑の撤去を求める執拗な右翼の抗議に県が屈して、碑前で挙行された追悼式における些細な政治的発言(「強制連行」)を口実に許可条件違反ということにして、追悼碑を撤去したところにあることが明らかにされた。この点、山本知事の主張は、①守る会の「ルール違反」がすべてである。②「司法の場で議論し最高裁で結論が出た」終わった話である。③追悼碑が「紛争の原因」になってしまっているという3点にあるが、いずれも理由として成り立たないことも明確化された。
 群馬の森の次は、東京都の横網町公園、そして全国の追悼碑が次々と撤去され、最後の総仕上げが憲法改悪であり、歴史修正主義者の真の狙いはそこにあると思って間違いない。このように、群馬の森朝鮮人追悼碑をはじめとする追悼碑撤去問題は、「憲法改正問題」と深く関わっているのであり、だからこそ決して軽視してはならないのである。今回、山本知事が歴史修正主義者(改憲勢力)の不当な圧力に屈し、追悼碑を撤去してしまったことは、必ずや悪しき前例となり、今後に大きな禍根を残したと言えよう。
 以下、本セミナーに参加した若い学生の意見を紹介することにする。


 学生① セミナーに参加させていただき、ありがとうございました。今回のセミナーに参加して、「群馬の森公園」と「朝鮮人追悼碑」の存在を初めて知りました。私は、セミナーの内容を少し難しく感じ、理解が浅いところが出来てしまいました。完全な理解が出来たとまでは言いにくいです。可能な限り、理解を深めたいと思っております。一つの事例・出来事に対して様々な立場や意見があるということをセミナーから学ばせていただきました。今後は学んだことを活かして政治的な意見に耳を傾けて、自分なりの意見を持ってみようと思います。


 学生② このセミナーに参加して私は、政治家は民意にあらゆることで左右されるのが当然であると考えていたので、左右され過ぎるのは良くないという意見に驚きました。ですがその民意が正しいとは限らないことや誰が唱えたものなのかということで変わってくるという話を聞いて、納得しました。
 さらに、政治的中立とはそれから一切政治的なものを排除することではなく、賛成と反対どちらの意見も採用することであるという話にも驚きました。その上、行政の頒布物に載っている政治的な意見は行政の立場ではないという話にも驚きました。確かに賛成と反対どちらの意見も載せて、平等に扱うことが出来れば必然と中立となるかと合点しました。
 また、これまで私は、政治的なことにはあまり興味がなかったのですが、これからは選挙の時期以外でも政治に関心を持ってみようと思いました。手始めに右派と左派の区別をつけてみようと考えています。


 学生③ SNSでこの事件についてみることはあったが、経緯がよく分かっておらず、「約束を破ったのなら仕方ない」くらいに考えていたが、今回のセミナーで経緯や背景について知れてよかった。この問題の争点では「約束を破った」ことだけでなく「追悼碑が紛争を呼び込み公益に反するものであるか」が重要であると学ぶことができた。
 最初の数年で、約束を破って政治的発言をしてしまったのは、県に慰霊碑を撤去する大義名分を与えてしまったのでよくなかったと思うが、当時はそこまで考えが及ばなかったのかもしれないとは思う。また追悼碑の存在は近隣住民に何ら害を与えていないという点にも納得した。県は決断を下す前に追悼碑の存在が公益に害を与えているかということを具体的に検証すべきだったと思う。漠然と公益に反すると主張するだけでは不誠実であろう。


 学生④ セミナーへ参加させていただき、ありがとうございました。私の日常生活ではあまり聞かない話題でしたので、今回のセミナーは私にとって有意義な学びの機会になりました。そもそも、群馬県に「群馬の森」という都市公園があることや、そこに朝鮮人追悼碑があることを初めて知りました。長く裁判が行われていたという事実にとても驚いています。私を含め日本人が、いかに戦争に対して、引いては平和に対して、無関心であるかということを感じました。
 多少の知識はあっても、日本が他国民を虐げていた歴史を実感することは私には難しいです。しかし当時の日本によって生まれた苦しみを語り継いでいる国や地域、民族があるということを忘れてはいけないと思いました。今回のセミナーで扱われている追悼碑は、日本人が今も被爆の歴史に大切に向き合おうとしているように、朝鮮人も歴史を重く受け止めていることを表す一例であると思います。 

以上 文責 当日講師 藤井正希氏


2023年12月25日月曜日

2024年2月 JSAG冬季セミナー

2月14日(水) 18:30~ ZOOMセミナーです。アドレスは下記のとおりです。

https://gunma-u-ac-jp.zoom.us/j/89938680975?pwd=v2GBNbscpEIvnDz0m5IZhdkchUdQw6.1


 

2023年12月8日金曜日

JSAG 秋季セミナー 酒井弘明氏 講演要旨

JSAG 秋季セミナーは11月22日(水)18時30分〜20時 ZOOMにて開催されました。今回のセミナーには、群馬県議会議員 酒井宏明氏を講師に迎えて「デジタル化にひた走る群馬県政」と題して、講演を行っていただきました。以下は、酒井氏 本人による要旨です。

 2期目を迎えた山本一太県知事県政は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に躍起となっています。県庁32階に動画スタジオ「tsulunos(ツルノス)」を設置したのをはじめ、JR前橋駅前に中高生を対象としたデジタル人材育成の拠点「tsukurun(ツクルン)」を開設。さらにGメッセに、TUMO(ツーモ:アルメニアのクリエイティブ人材育成プログラム)センターをつくろうとしています。また、前橋市と一体となって、GunMaaS(デマンドバスやタクシーの検索から予約、決済までスマホ一つでできるシステム)の社会実験に新年度4億円以上投入しています。
 群馬県議会第3回後期定例会には、路線バスでもマイナカードが使えるようにするための予算3900万円が盛り込まれました。しかし、キャッシュレス決済といいながら、県内私鉄3社はSuicaなど交通系ICカードが利用できません。また、GunMaaSで前橋市民割引を受けるのに、マイナンバーカードが必要となるなど、行政サービスに格差を設けるのかと市民から批判の声が寄せられています。
 さらに群馬県は、JR前橋駅から県庁まで(約1.8㎞)を「新たなモビリティサービスに対応した走行空間や沿道、街並みを含めた一体的な構想デザインを策定」するためとして3100万円を予算化しました。市町村乗り合いバスや路線バスへの補助は横ばい。既存の公共交通へのきめ細かい支援こそ求められています。
 そのマイナンバーカードの取得には、湯水のように税金がつぎ込まれています。ショッピングセンターに申請窓口のブースを設け、商品券や金券(1万円)を贈呈するなど、昨年度だけで2億8千万円を投入。これだけつぎ込んでも、保有率は全国平均並み(72.7%、全国35位:11月末現在)。申請したにもかかわらず、市町村窓口に受け取りに来ない人は県内で数万人もいる実態です。マイナンバーカードの取得はあくまでも任意であり、取得しない人が行政サービスから排除されるようなことがあってはなりません。(前橋市では高齢者へのタクシー券補助にあたり、2022年度からマイナンバーカードの取得が強制されています)
 マイナンバーカード保険証の利用に関して、医療機関の窓口でのトラブルが相次ぎ、利用率が6か月連続で低下(10月4.49%)しています。ところが政府は、2024年秋に現行の保険証を廃止することを決め、それに対してなにも言えない山本県知事県政の実態が浮き彫りに。
 さらに、「シリコンバレーを超える」などと豪語しながら高崎市と共同で進めている、堤ケ岡飛行場跡地への最先端企業誘致。2028年度から用地買収・造成工事を始めるとしています。このようにDXには熱心な一方で、県民のくらし、福祉には冷たい県政です。
 県民の粘り強い運動で18歳までの医療費無料化はこの10月から実現しましたが、一部補助を含めて県内34市町村に広がっている学校給食費の無償化にはきわめて消極的です。
 学校現場は今、教員不足が深刻となっています。2021年度から小中学校全学年で35人学級が実現したものの、毎年1億円も少人数学級のための予算を削減してきたために、9月段階で20人も不足しています。いじめや不登校が急増するなど学校が安心して学べる場になっていない現状があります。学校現場の諸課題を解決していくためにも、正規の教員を抜本的に増やしていくことが重要です。
 保育士の配置基準も4歳・5歳児は子ども30人に保育士1人の配置基準は75年間も変わっていません。1歳児は現在、国基準では6:1ですが、県では5:1に若干上乗せしています。これを4:1に改善するのに、あと4億円あればできるのです。ぐんまちゃんブランド化に昨年度4億円が投入されました。そのお金があれば実現できたのです。
 私は、こうしたデジタル一辺倒の県政を批判しつつ、コロナ対策や環境問題、朝鮮人追悼碑問題など県政の主な争点と打開策を語りました。
質疑応答の中で、大型道路の開発に関しての「費用対効果」が恣意的に行われているのではないか、デジタル田園都市国家構想の交付金は何に使われているのか、最近増えている「ひきこもり」への対策は、などの質問が出されました。
 また、「スクールカウンセラーは非常勤でなく、しっかり位置づけてほしい」「中学校の部活動の地域移行では指導者の資質や保護者負担など課題も多い」「教員不足は深刻。教員採用試験を受ける人も減っている。少人数学級の予算は確保すべき」など、たくさんの意見や要望が出され、有意義なセミナーとなりました。

文責 酒井弘明(群馬県議会議員)

2023年9月26日火曜日

JSAG 夏季セミナー 斎藤 周氏 講演要旨

群馬科学者会議群馬支部 夏季セミナー
2023年7月27日18時30分~20時 (ZOOMセミナー)
 夫婦別姓訴訟と同性婚訴訟の判例を読む
 講師 斎藤 周氏(群馬大学共同教育学部 教授)


 ジェンダーと家族をめぐる戦後日本の法制度は、大きな問題をいくつも内包していた。1985年の女性差別撤廃条約批准の後も、改善の歩みは遅々としたものにとどまっている。とはいえ、婚外子への相続差別の撤廃、女性の再婚禁止期間の短縮、婚姻適齢の男女とも18歳への変更といった法改正は行われてきた。その中で、依然として解決していないのが選択的夫婦別姓の導入である。また世論の関心が急速に高まってきた論点として、同性婚制度の法制化がある。この二つの論点について、裁判例の動向を紹介する。

1 夫婦別姓訴訟(最高裁判決)

 夫婦同姓を強制する民法750条の合憲性が裁判の場で問われている。これまでに3件の最高裁判決が出されているが、いずれも夫婦別姓を認めない現行法を合憲と判断している。
2015年の最高裁判決の多数意見は、以下のように述べている(その後の最高裁判決もこれを踏襲)。
 「氏は,家族の呼称としての意義がある」「家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位と捉えられ,その呼称を一つに定めることには合理性が認められる」。「そして,夫婦が同一の氏を称することは,上記の家族という一つの集団を構成する一員であることを,対外的に公示し,識別する機能を有している」。「嫡出子であることを示すために子が両親双方と同氏である仕組みを確保することにも一定の意義がある」。「家族を構成する個人が,同一の氏を称することにより家族という一つの集団を構成する一員であることを実感することに意義を見いだす考え方も理解できる」。「子の立場として,いずれの親とも等しく氏を同じくすることによる利益を享受しやすい」。「夫婦がいずれの氏を称するかは,夫婦となろうとする者の間の協議による自由な選択に委ねられている」。
 一方で、少数意見にとどまり、最高裁の結論にはならなかったものの、多数意見への批判的見解も示されている。最高裁2021年判決の宮崎裕子・宇賀克也反対意見は、夫婦別姓を認めない現行民法が違憲であることを、以下のように論じる。
 「氏名に関する人格的利益は,氏を構成要素の一つとする氏名(名前)が有する高度の個人識別機能に由来するものであり,氏名が,かかる個人識別機能の一側面として,当該個人自身においても,その者の人間としての人格的,自律的な営みによって確立される人格の同定機能を果たす結果,アイデンティティの象徴となり人格の一部になっていることを指す」。これは「人格権に含まれるものであり,個人の尊重,個人の尊厳の基盤を成す個人の人格の一内容に関わる権利であるから,憲法13条により保障される」。「夫婦同氏制のゆえに,婚姻によって夫となり妻となったがゆえにかかる人格的利益を同等に共有することができない状況が必ず作出される」。「そもそも氏が家族の呼称としての意義を有するとする考え方は,憲法上の根拠を有するものではない」。「現実にも,夫婦とその未婚子から成る世帯は,時代を追うごとにますます減少しており,世帯や家族の実態は極めて多様化し,子の氏とその子が家族として暮らす者の氏が異なることもまれでなくなっている。したがって,そのプロトタイプたる家族形態において氏が家族の呼称としての意義を有するというだけで人格的利益の侵害を正当化することはできないと考える。他の家族形態においてはそもそも氏が家族の呼称という実態自体があるとはいえないからである」。「夫婦同氏を婚姻成立の要件とすることは,当事者の婚姻をするについての意思決定に対する不当な国家介入に当たるから,本件各規定はその限度で憲法24条1項の趣旨に反する」。
 さらに、2022年最高裁判決の渡邉惠理子反対意見も以下のように指摘する。
 「氏の同一性によっては家族を「識別」できない場合は既に相当数存在して」いる。「そもそも,家族の一体感は,間断のない互いの愛情と尊敬によってはじめて醸成,維持され得るものであり,同一氏制度によってのみ達成できるものではない」。「同一の氏であることが家族の一体感を醸成することに役立つとしても,そのような家族の一体感が,婚姻に伴い氏の変更を余儀なくされた一方当事者の現実的な不利益(犠牲)によって達成されるべきものとすることは過酷であり,是認し難い」。「親と氏を異にする場合に子が受けるおそれがある不利益は,氏を異にすることに直接起因するというよりは,家族は同氏でなければならないという価値観やこれを前提とする社会慣行等に起因するもののようにも思われる」。
 両反対意見(違憲論)は極めて説得的であり、多数意見(合憲論)は支持できない。

2 同性婚訴訟(地裁判決5件)

 同性婚を認めていない民法・戸籍法の合憲性を問う訴訟が各地で起こされていて、すでに地裁判決5件が出揃っている。そして5件中の4件(2021年の札幌地裁、2022年の東京地裁、2023年の名古屋地裁・福岡地裁の判決)が現行法を違憲と判断していて、合憲と判断したのは1件(大阪地裁)のみである。
 このうちの札幌地裁判決は以下のように述べ、同性婚を認めていない現行法が憲法14条1項に違反すると判断した。
 「現行民法は,子のいる夫婦といない夫婦,生殖能力の有無,子をつくる意思の有無による夫婦の法的地位の区別をしていないこと,子を産み育てることは,個人の自己決定に委ねられるべき事柄であり,子を産まないという夫婦の選択も尊重すべき事柄といえること,明治民法においても,子を産み育てることが婚姻制度の主たる目的とされていたものではなく,夫婦の共同生活の法的保護が主たる目的とされていたものであり(略),昭和22年民法改正においてこの点の改正がされたことはうかがわれないこと(略)に照らすと,子の有無,子をつくる意思・能力の有無にかかわらず,夫婦の共同生活自体の保護も,本件規定の重要な目的である」。「本件規定が同性婚について定めなかったのは,昭和22年民法改正当時,同性愛は精神疾患とされ,同性愛者は,社会通念に合致した正常な婚姻関係を築けないと考えられたためにすぎないことに照らせば,そのような知見が完全に否定されるに至った現在において,本件規定が,同性愛者が異性愛者と同様に上記婚姻の本質を伴った共同生活を営んでいる場合に,これに対する一切の法的保護を否定する趣旨・目的まで有するものと解するのは相当ではない」。
 そして、名古屋地裁判決は、以下のように論じ、現行法は憲法24条2項と14条1項に反すると結論づけた。
 「法律婚制度を利用するについての自由が十分尊重に値するとされる背景にある価値は、人の尊厳に由来するものということができ、重要な人格的利益であるということができる」。「現行の家族に関する法制度における現行の法律婚制度は……、同性愛者を法律婚制度の利用から排除することで、大きな格差を生じさせていながら、その格差に対して何ら手当てがなされていないことについて合理性が揺らいできているといわざるを得ず、もはや無視できない状況に至っている」。「婚姻及び家族に関わる立法として、本件諸規定は、性的指向という、ほとんどの場合、生来的なもので、本人にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由として、婚姻に対する直接的な制約を課すことになっている」。


 ここに引用した両判決の議論は的確であり、支持できる。さらにいえば、憲法24条が「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」と規定しているのは、家長たる父親の許しがなければ結婚できなかった帝国憲法下の家制度を否定するものであり、両当事者の合意があれば婚姻を認めるべきという趣旨に理解すべきである。したがって、同性婚を認めない現行法は憲法24条1項違反というべきである。また、両判決は、異性婚に限られた現行の婚姻制度を維持しつつ同性カップルのための制度を別に設ける可能性を示唆しているが、同性婚を異性婚とは異なる制度の中に押し込めることの合理性・必要性は見出しがたく、支持できない。同性カップルにも異性カップルにも開かれた婚姻制度に転換すべきである。

 

 文責 講演者 斎藤 周