2021年1月21日木曜日

 JSAG 冬季セミナー
2021年1月28日(木)、18:00~19:30
「群馬県内の外国人労働者の現状と課題」
講師 マコヴェツ・アニタさん(スロベニア出身
 

 遅くなりましたが、先日のJSAG冬季セミナーの内容を掲載します。

2021年3月3日 担当者

2020年度の群馬支部・冬季セミナーは、2021年1月28日(木)、「群馬県内の外国人労働者の現状と課題」をテーマにズームで開催された。講師として、群馬大学大学院社会情報学研究科を修了し、群馬銀行に勤務経験があるスロベニア出身のマコヴェツ・アニタさんを招いた。本セミナーは、多数の参加を期待するべく、参加も出入も自由で、約2時間おこなわれた。
具体的なプログラムとしては、まず前半に、アニタさんによる「群馬県内での労働体験」についての講演と質疑応答がおこなわれた。その際、彼女には、群馬県での労働体験をそのまま語ってもらった。①働きたくてもビザが下りず、ビザ取得で苦労をしたこと、②外国人労働者は文化の違い(残業、休暇、飲み会など)で苦戦する可能性があること、③日本で働くことにより得られる可能性は国籍によって違いがあること、④高度な日本語能力があった方が有利であること、⑤外国人労働者についても文系より理系が重視されること等が語られた。特に日本人が親切で優しいこと、また、仕事に手厚いフォローがある日本企業で働くことにより、ビジネスする上での必要な体験を得るとともに、人として成長ができたことを語っていたのが印象的であった。
そして、後半では「外国人技能実習制度および特定技能制度」の問題点を簡単に学習した後、それについての討論がおこなわれた。参加者は最大27人で、様ざまな分野の研究者はもちろん、弁護士、県会議員、上毛新聞記者、そして群馬大学の学生も多数参加し、議論は白熱した。技能実習制度については、「国際協力・貢献」でなく、日本の「労働者不足を補う制度」となっていること、低賃金、残業代未払い、長時間労働等、労基法違反が横行していること、また、特定技能制度については、中小企業に広がる深刻な人手不足を解消するという趣旨は是認しうるが、「事実上の移民政策」に通じかねないこと等が指摘され、議論された。この問題の背景には、日本が移民・難民を積極的に受け入れ、本当の意味での“多文化共生社会”となるべきなのかという根本問題が横たわっている。この点については、国民間での議論や理解、コンセンサスはいまだ極めて不十分と言わざるをえない。これは、少子高齢、人口減少の社会に向かう日本における大きな課題であり、将来の日本を大きく左右する。本セミナーはJSA本部から助成を受けている共同研究についての活動の一環として開催されたものであるが、今後とも群馬支部としてこのテーマを継続的に追究していきたいと考える。


                                                                                       文責  群馬大学 藤井正希