2024年12月20日金曜日

JSAG秋季セミナー 丹治杉江氏 講演要旨

 JSAG秋季セミナー 今回は対面講演でした。 参加者13名 
場所 群馬県前橋市総合福祉会館第3会議室
2024年11月12日(火)17時30分~19時30分 講師 丹治杉江氏
(ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・ふくしま伝言館事務局長 ALPS処理汚染水放出差止訴訟事務局長)
演題:終わらない原発事故~福島被災地レポート                
何の落ち度もないのに原発事故被災・司法不当判決・汚染水放出による環境再汚染…三重被害者となった

はじめに
 東日本大震災とそれに続く東京電力福島第一原発事故から13年7か月。放射能事故は収束どころか、ますます深刻で複雑な事態となっています。被災地の「原発事故緊急事態宣言」は発せられたまま、福島県は公衆の被ばく限度として国際的に勧告されている年1ミリシーベルトの20倍、20m㏜を容認強要。法治国家で許されるのでしょうか。
 政府・マスメディアは「復興」を強調しますが「復旧」さえも儘ならない、学校も、医療機関もスーパーもガソリンスタンドも介護施設もまともにない地域に被災者が戻れる筈はなく、避難指示地域の帰還率は10%程度。将来の町の未来像は描けないのが実態です。
 福島第一原発では、「廃炉」の最終形が見通せず、作業員の被ばく事故が相次いでいます。デブリ0.7g取り出しに2兆円!事故後13年でこの事態。できもしない廃炉をできるかのように装う「やるやる詐欺」に騙される一方で、福島事故原発の二次災害リスクは高まるばかりです。汚染水海洋投棄に伴う作業員の深刻な被ばく事故も続いています。
 一方で、元日に発生した能登半島地震では、震源近くに立地する志賀原発(停止中)も強い揺れと3メートルの津波に襲われ、変圧器から約2万リットルの油が漏れ、外部電源の一部から受電ができなくなるなどのトラブルが生じました。道路の寸断、海岸線の隆起、放射線モニタリングポストの故障等、改めて原発施設の脆弱性と放射能から「逃げる・遮断する・洗う」という「避難」「防御」計画の非現実性を浮き彫りにしました。
 にもかかわらず、石破首相は岸田政権のGX政策を強力に推し進めようとしています。どんな革新炉でも「使用済み核燃料」の安全な処理、放射能をなくすことは原理的に不可能なのです。「安全が確認された原発再稼働」という「安全の基準」とは何でしょうか?
 福島事故被害は続いています。放射性物質の拡散と、被害の実相を伝える人々に「風評加害者」レッテルを張り、事故の終息/被災者切り捨てを進める原子力複合体を告発します。

1)福島被災地の状況
①ふるさとに戻れない住民は8万人余、今後100年は人が住めなくなってしまった地域は7町村にわたり309㌔㎡、東京23区の半分の広さに及びます。震災前には病院は8つありましたが、 再開したのは2つ。診療所は61から32に減りました。学校については、小学校・中学校は震災前にあわせて41校ありましたが、現在は23校です。県立高校も8校から2校(6校は休校)。これらの数字には原発事故の過酷さ、異常さ、事故が終わってない事が示されてます。
②帰還困難区域に「特定再生復興拠点」?!帰還か避難継続か。分断と矛盾を拡大。
③原発事故避難者などの関連死は2,335人。(直接死1600人)関連自殺者はわかっているだけで119人。孤独死激増。子ども甲状腺がん問題は第2次検査では高線量地域での発生が顕著。事故10年後から始まるとされた原発事故由来の「心筋梗塞、多臓器ガン」の発症など、静かにしかし確実に健康被害が始まっています。
④福島県の産業もまだら状に「特需景気」もあるものの事故前には戻っていない。農業産出額は国の支援もあり3.11前の90%まで回復している物もあるが、林業産出額は80%(山菜・キノコの出荷制限16県に及んでいる)。漁業では沿岸魚業の水揚げ高は20%台で厳しいまま。今後、長期間の「汚染水放出」の影響が懸念される。
⑤コンビニ・スーパー・ガソリンスタンド(日曜休業多し)はわずかながら開店。床屋はあっても、病院も美容院も介護施設も保育園も1~2か所。若者がいない。子育て世代がいない。地域社会はまともに機能していない。

2)「廃炉中長期ロードマップ」第5回改訂、40年で終わらない
◎不都合な真実・・・「廃炉」「避難」「ボランティアの放射能被爆」に関する法律が無い
■「廃炉・廃棄物」30年後の責任者は?、 70年80兆円越え?、税金と電気代!

終らない廃炉・危険なフクイチ
廃炉作業労働者は1日約4,000人が年間被ばく量50m㏜、5年で100m㏜上限まで働かされるのです。「基準」は非人道的。しかし、作業員が居なければ廃炉はできない。
①デブリ問題・・・メルトダウンを起こした1~3号機の全量推定880t取り出せても最終処分の見通しはない。今後の28年で取り出すとしたら、毎日休みなく80㌔ずつ取り出さなくてはならない計画。13年間で、デブリ0.7gつまみだしで大喜び?
➁原子炉格納容器蓋・・・・桁違いのセシウム付着が判明
1~3号機の格納容器上蓋(シールドプラグ)に途方もない高濃度の放射性物質が付着していることを発表。その量は3基合計で50.1PBq∼最大70P㏃。※ P=ペタ・・・1,000兆Bq(ベクレル) 「7京問題」と呼ばれる。3.11拡散量の23倍以上。
③廃炉に伴い発生する「原子炉建屋構造物や制御棒」など「低レベル」L1放射性廃棄物とはいえ、かなりの高線量廃棄物。総量28万㌧、規制委員会規制基準ではすべて地下70メートルより深く埋めて3~400年は電力会社、のち10万年は隔離保管。これは北海道寿都町で話題の高レベル廃棄物とは別の問題。参:1600年関ヶ原の闘い
④中間貯蔵施設(大熊町・双葉町16k㎡)(2,200万トン!)、30年後どうする?
⑤1号機の土台(ペデスタン)損傷!燃料プールに倒壊したら最悪事故に。鉄筋コンクリートの円筒形で、厚さ1.2メートル、内側の直径は5メートル。核燃料が入っていた重さ440トンの圧力容器を支えているが、壁面が床から高さ1メートルにわたって全周でコンクリートがなくなり、鉄筋が露出。事故時の溶融燃料の熱で崩壊した可能性がある。土台外周の床付近は堆積物が積もって確認できず、損傷の奥行きは不明。
⑥たまり続けるALPS処理後、こし取られた汚泥状の「スラリー」の処分方法がない。
ストロンチウムやセシウム、数千Bq(ベクレル)の高濃度汚染物。2013年からたまり続けて現在数百トン。容器の劣化も進む中、処分方法がない。
 
3)ALPS処理汚染水・海はゴミ捨て場ではない!プラスチックはダメで放射能はいいの?
 デブリある限り、地下水の流入を止めない限り、汚染水発生し、放出は続く。現在は90~100t/日発生。放出は3月までで3万1200tでタンク約30基分だが、増える量は約20基分。実質10基分しか減らない。海洋環境は汚染されつづける。
 タンク1000基にたまった130万㌧!汚染水を海洋投棄することが「福島の復興」に役立つのか!廃炉を進める為に必要なのか!IAEAは国際的中立の第三者機関か。

■9月8日、11月9日福島地裁に「海洋放出差止」訴訟提起
「ALPS処理汚染水」の海洋放出によって「二重の被害」を受けることになる。しかも今回の被害は国や東電の故意によるもので、新たな加害行為だ。
・海洋放出は非科学的!・・・・六ケ所村再処理工場の汚染水問題が見え隠れ。海産物の体内蓄積や環境への影響が専門家から懸念。海水で薄めても総量は同じ。
・2015年「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」という約束反故は民主主義の破壊行為であり、今後の福島廃炉に伴う放射性廃棄物の処理の合意形成の試金石。「放射性物質」を故意に、人類共有の資産であるに流すという行為は、法律以前の平穏的生活権侵害であり道徳性・倫理感の欠如、平穏生活圏の侵害です。賠償金を用意しなければ行えない「海洋投棄」は即刻中止すべき、と、怒りをもって福島地裁に提訴。

この海洋投棄案には対案がある
①10万トン級大型タンクの建設による長期保管や、モルタル固化処分案
➁地下水を遮断できる「広域遮水壁」案、流入を止める集水井戸。

◆現在のダダ漏れ凍土壁345億円、維持費10億円・・・広域遮水壁は半額で作れる。
・廃炉まで70年余。被害、81兆円という試算もある。たとえ汚染水海洋放出しても、長期の凍土壁の寿命も心配されている。まずは発生を止めることが重要。

4)真の復興を求めて・・・「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」
・新しい産業による新しいまちづくりで私たちが願う「ふるさと復興」は出来ない
・膨大な復興予算投入=惨事便乗型大型開発、ロボット開発に隠れた「軍事産業研究場」
・原発事故を利用して原子力ムラが「もうひと儲け」でしかありません。

5)減災・防災の立場から「原発稼働」ありえない!ゆるさない!!
・災害列島日本111の活火山 54基の原発は稼働しようがしまいが依然存在
・地震 異常気象 コロナ・・・「危険の予測と防御」「人道的避難」は国民的課題

6)原発事故被災者民事訴訟
・全国30余訴訟、被害者の権利回復、事故原因解明、救済を求めている。
・2022年6月17日最高裁は「想定外の津波」に逃げ込み「国の責任」を免罪。
・過去の責任の否定は、将来の義務の放棄。あの過酷事故の教訓や反省は?

《最後に》
・原発はそもそも憲法違反施設であり「核発電」。人口が少なく産業がない町なら迷惑・危険施設建設OKなのか。過疎村に金さえ投げ込めば、無理が通り道理が引っ込む?
・日本の原子力安全規制は、事故に責任は持たない、原子力推進側と一体の体制であり、「泥棒に十手を持たせる」のと同じとまで言われています。
・また、被災者を切り捨て、国の事故責任を否定し、再稼働に力を貸す司法の不正義は許せません。
・地震大国原発「耐震基準」600~1000ガル。三井ホーム5115ガル、住友林業3406ガル。今、新規原発の建設費用を含むもろもろのコストを事業者が発電前から徴収できるようにする「RABモデル」という制度が導入されようとしています。原発は国民にとってとんでもない負債なのです。SDGsや社会保障等を充実させても、一度原発事故が起きたらすべて終わりです。
・原発は核兵器製造の技術と表裏一体。プルトニウム製造工場です。私達は、次世代に、自らが解決できない重大な負債・課題を引き渡そうとしています。
・原発は嘘、隠蔽、札束、強権で動かし、「安全神話」は一貫した政・官・財・学・マスコミ、さらに司法の強力な布陣で作り上げられました。原発はクリーンでもグリーンでもありません。ウラン採掘から燃料加工、原発の運転廃棄物処理、廃炉に至る間まで、環境を汚染し労働者の被ばくを伴います。
・今原発は電力供給量5%程度。再生可能エネの4分の一です。節電と再生可能エネへの転換、蓄電池や電気の融通システムなど、原発なくても電気は足ります。
「無知は罪。無口はもっと罪。」  文責 丹治杉江



 

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