「ウクライナ・ロシア戦争と平和主義」
講師 藤井正希准教授 群馬大学社会情報学
2023年2月15日、本年度5回目のJSAGセミナーが特別編として、群馬大学の藤井正希准教授が講師となり「ウクライナ・ロシア戦争と平和主義」というテーマで、18時30分から20時30分くらいまで開催された。参加者は12名(会員7名、学生5名)であり、講師が約60分の報告をした後、非常に活発な討論が約60分おこなわれた。
今回のロシアの侵攻に対して、ウクライナのゼレンスキー大統領は、戦闘開始の当初から降伏の意思はまったくなく、勝利まで徹底抗戦する考えを繰り返し表明して、徴兵の可能性を明確にしている。それでは、もし日本がウクライナと同様な立場にたたされた場合、政府はどのように対応すべきであろうか。具体的には、政府は、憲法上、国民に戦闘の義務を課したり、それを前提にして徴兵制度を採用したりすることはできるのだろうか。これらは、これまであまり議論されてはこなかった問題であり、本セミナーでは特に「日本国憲法のもとで国民に戦闘を強制することの是非」が中心テーマとなった。
前半の報告の部分では、有識者の様ざまな意見を概観した。まず、降伏論として、①橋下徹(弁護士)、②伊藤真(弁護士)、③鈴木宗男(参議院議員)の意見が、これに対して、反降伏論として、①グレンコ・アンドリー(ウクライナ人の国際政治学者)、②松尾陽(法哲学者)、③想田和弘(映画監督)の意見が紹介された。その後、日本が他国から軍事侵攻された場合に取りうる手段について、(1) 国家が取りうる手段、(2) 自衛官以外の一般市民が取りうる手段、(3) 自衛隊員が取りうる手段にわけて分析が行われた。
後半の討論の部分では、ゼレンスキー大統領の戦時対応の是非、ウクライナ・ロシア戦争のそもそもの原因、国民に戦闘を強制することの是非等について活発な議論がおこなわれた。いずれもそう簡単に結論がでる問題ではなく、実際、結論はでなかったが、論点が究明され、理解は深まった。この点、「日本がウクライナと同様に他国から侵略される可能性」については「現在の日本が置かれている状況からしてありえない」ということで意見の一致を見た。ただし、真の問題点はその先にあると言えよう。
最後に、参加した二人の学生のリアクションペーパーを紹介する。
学生① 今回の講演会を受けて、憲法がそもそも何のためにあるのか考えさせられた。確かに国民の権利を守るために憲法は存在し、侵略された際に国から逃げる選択をした人の権利を守ることもできると考えている。
しかし国民の権利を守る憲法も、侵略により国がなくなってしまえば効力もなくなってしまう。また侵略した国が日本国憲法と同様に人権を認める可能性は低いと考えた。となると日本国憲法に基づいて政治が行われている日本を守るための最低限の自衛は必須だと考えた。
学生② 自分は、他国が自国に攻めてきたら、国から戦闘を強いられないなら逃げたいと思った。だが、国が戦闘を強いるなら、逃げても捕まると思ったので、諦めて他国の攻撃に抵抗するだろうと思った。
文責 講演者本人
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