日本科学者会議群馬支部( JSAG ) 1022年 夏季セミナー (Zoomミーティング)
2022年8月8日(月)18時30分〜20時の日程で行いました。
講師:山田博文氏(群馬大学 名誉教授)司会は永田瞬先生(高崎経済大学)
報告要旨
「円安・物価高と日本の選択〜アベノミクスの結末と転換迫られる日本~」
日本経済は半世紀ぶりの円安になり、輸入物価が4割ほど高騰しています。とくに輸入に依存した食料品・ガソリンなど、生活必需品の値上がりが深刻です。すでに食品1万8532品目で14%も値上げされました。物価が上がっているのに、賃金は伸びず、隣の韓国にも追い越され、そのうえ4千万人の年金も削減されました。社会保障や税負担など国民負担率が上昇し、国民生活は苦しくなる一方です。貯蓄なし世帯が3割に達します。
他方で、大企業や富裕層の富は増大しています。大企業の内部留保金は毎年増え、20年度には466兆円に達しました。大口投資家も稼ぎまくり、国内の株式配当金で毎年30兆円前後、海外投資からも20兆円前後の利子・配当金を受け取っています。貧富の格差が拡大しています。
このような事態(表1)に日本経済を追い込んだのは、国民生活を犠牲にしたまま円安と株高を誘導したこの10年間のアベノミクスです。その上、経済規模の2.6倍もの政府債務という負の遺産が残されました。これは終戦直後に抱え込んだ債務の水準です。終戦後にこれらの債務は、預金封鎖などで捕捉した国民の金融資産や不動産などに高率の財産税をかけて徴収した税収や3年間で100倍に達するハイパーインフレによって「返済」されました。つまり終戦後の政府債務は国民からの大収奪で「返済」されましたが、憲法第25条を抱く、現代日本でそのようなことは許されません。
アベノミクスのもとで形成された巨万の富(対外純金融資産411兆円、富裕層資産333兆円、内部留保金466兆円、など)への課税、といった応能負担原則に基づいて政府債務問題を解決するべきでしょう。
世界経済における日本経済の地位は、1990年代以来、長期にわたって没落する一方ですが、広く世界や歴史を見渡すと、新しい展望も見えてくるようです。産業革命以来、世界最大の経済圏になったのは、日本もそこに位置するアジア経済圏です(図1)。日本の最大の貿易相手国は、アメリカから中国へ変わりました。日本貿易の過半がアジア諸国に依存する時代がきました(表2)。「中国仮想敵国」視などは日本経済の沈没の道です。むしろ、21世紀の日本経済の展望は、中国やアジア諸国との平和的な共存共栄にあるといえます。
幸い、アジア諸国はMade in Japan製品の品質に絶大な信頼を寄せ、身の回り商品(お茶、化粧品、果物、食品、玩具、生活グッズ、etc.)をブランド視し、輸入を増やしています。軍備対軍備の競争は愚かで危険な戦争への道であり、世界に誇る憲法と平和外交で未来を切り開いていくならば、日本経済のルネサンスが可能のようです。もちろん、国内では、貧富の格差の是正、賃上げ、社会保障の充実、ジェンダー平等、エネルギーや食料自給率の大幅改善、大企業・富裕層・海外の大口投資家優先の経済システムの抜本的な転換などが大きな課題です。いまその大転換が求められているようです。
要旨は報告者本人に執筆していただきました。
下に掲げる図表はやや不明瞭ですがJSAGニュースでは、鮮明なものをお届けする予定です。
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