JSAG2019年度秋季セミナー(2019年11月6日)について
外国人労働者問題を考えるというテーマで『オキュパイ・シャンティ』の映画上映、下山順弁護士の解説、参加者による質疑応答を行った。映画は、東京都内のインド料理店で起こった賃金未払い事件を扱っている。10年間働いているが、未払い賃金が多額にある。経営者は逃げてしまって支払いの展望が持てない。在留資格上の制限もあるので、他の職業に移動することができない。店舗で寝泊まりしながら生活する当事者たちは、弁護士や活動家の支援を得て、労働組合(ユニオン)を結成し、経営者と交渉する。SNSを活用しながら、カンパや物資援助など支持を拡大し、新たな経営者の担い手を見つける。そのような映画であった。
下山弁護士は、日本の在留資格や外国人労働者受け入れ体制の特徴について解説を行った。日本では、外国人労働者に対する国家レベルでの政策が欠けているため、日弁連としては受け入れに慎重・反対の立場をとっている。外国人技能実習生などは、帰国前提であるため、労働者としての権利が弱い。群馬県内でも沼田市などで、農業の技能実習生の受入れ事例がある。就労環境の悪化から脱走した技能実習生が、弁護士に相談するケースがある。
質疑応答では、外国人労働者の権利確保の問題として、制度が十分に保障されていない中でも、労働組合(ユニオン)が結成されることで、交渉のテーブルに乗せることができることが指摘された。日本人の就労環境も悪化している中で、国籍を問わず労働組合の役割が大きくなってくる。また、日本国憲法では、生存権の対象者を日本国籍者に限定しているが、実際上は、外国人労働者やその家族への権利拡大に理解を示す地方自治体もある。在留資格の問題に加えて、外国人労働者と国籍条項の関係についても議論を進めるべきことなどが指摘された。
参加者は講師も含めて13名だった。学生が率直に感想を述べて、憲法上のかかわりなどについて意見交換する機会は少ない。講義以外の場所で、社会問題や時事的な問題について、専門家と一緒に議論をする。こうした場所をもう少し増やしていくことが大事はないかと考えた。
(高崎経済大学・永田瞬)
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